生産システム工学

生産システム工学

生産とはこの世に無い事物を新しく作り出すことです。私たちの暮らしは、人類の文明史以来行われ続けてきた生産によって豊かになり、支られえてきました。産業革命以降、人工物の生産は、様々な生産主体が分業する生産システムで行うのが一般的となり、現代においてもその仕組みは継承されています。

一方現代においては、資源の有限性や生産者の労働環境の改善、災害時によって生じる損失の最小化、リードタイム短縮など、様々な課題が生じています。生産システム工学は、このような課題を踏まえ、生産システムを適切に管理するための理論と方法を探求する学問です。

本研究室では、現代社会に求められる次世代の生産システムの探求し、適切に管理、運用する方法を検討しています。

本研究室のアプローチ

生産システムの挙動解析イメージ

人工物を生産するためのサプライチェーンは、一度停止すると多大な損失を出してしまうため、実物そのものを研究対象として扱うのは簡単ではありません。ですが、計算技術の発達により、サプライチェーンを模したシミュレータを計算機上に開発することが可能となっており、計算機上でサプライチェーンの挙動を解析し、適切な管理方法を見出すことが可能です。

本研究室では、計算機上にサプライチェーンのシミュレータを実装し、その分析、管理方法の探求を行う構成主義のアプローチをとります。

本研究室の取り組み

内示生産システム

近年における顧客要求の多様化により、多品種少量生産の実現が要請されており、限られた期間内で多種の部品を生産可能とする生産システムが求められています。そこで予め需要を予測し、必要部品の見込み注文(内示情報)をサプライヤーに対して行う内示生産システムが注目されています。内示生産システムにおけるサプライヤーは、正式な注文(確定注文)に先立って提示される内示情報を基に部品を生産することにより、多種の部品を安定かつ大量に供給可能となります。ですが、確定注文と内示情報に大きなズレが生じた場合、過剰在庫や納期遅れにつながるという課題があります。このように、内示生産システムは、需要変動によって生じる不確実性のリスクを含んでいます。

本研究室では、上記の課題を踏まえ、内示生産システムを計算機上でシミュレーションを行い、その挙動を解析し、適切に管理するための方法を検討しています。

自然災害に強い生産システム

我が国では、自然災害によって物流の障害が発生するリスクが高いため、災害発生時に食料などの必需品が生活者の手元に輸送困難となってしまう場合があります。例えば、東日本大震災においては物流が滞り、一部の地域においては長らく食糧難になりました。自然災害が発生したとしても、生活に必要な物流を滞りなく実現するような生産システムが必要です。

自然災害に強い生産システムに特徴として、ロバスト性レジリエンスの二つを挙げることができます。ロバストな生産システムとは、自然災害が発生したとしてもその機能を失わないような生産システムを指します。対してレジリエントな生産システムとは、機能が一時的に喪失したとしても、短時間で復旧可能であるような生産システムを指します。

本研究室では、ロバスト性とレジリエンスを考慮した生産システムのモデル化とシミュレーションを行い、その挙動を解析し、自然災害に強い生産システムの実現を目指しています。