顧客の価値実現

ユーザレビューを用いた製品の使われ方と使用感の抽出の研究
使用価値の実現する新製品・サービスを設計する場面においては、従来の製品・サービスの使用シーンを調査した上で新製品・サービスへの要求を把握する取り組みが行われてきました。これまでは、このようなユーザ調査は人手によって行われてきましたが、その結果は調査者の主観の影響を受ける上、調査の量と質を両立することは困難でした。
一方、情報技術の進展により、大量データから有用な知見を得ようとするアプローチが設計開発においても試みられており、ユーザが自由に記述した大規模データからデータ処理により情報を抽出することによって、多数のユーザを対象にし、かつ、データ収集側の主観に囚われない客観的な知見が得られると考えられます。
このような考え方の下、本研究ではユーザがどのように製品を使用しそれに対してどのような印象を抱いているかについて、ユーザレビューを収集したデータを用いて抽出する方法を検討しています。
Keywords: 使用価値、ユーザレビュー、自然言語処理、形態素解析、共起ネットワーク
使用価値の定量評価とシミュレーション
実際に設計した製品・サービスがどの程度ユーザにとっての使用価値を実現するかを見積もることができれば、市場へ展開する前段階で改善設計やターゲットの見直しが可能です。
しかしこのような作業は、これまで経験と勘によって行われており、客観性、そして効率性に欠けるという欠点がありました。特に、ライフスタイルの多様化に伴い、経験と勘のみによって使用価値を想定することはますます困難になりつつあります。
本研究では、使用価値を定式化し、定量的に評価する手法を検討しています。使用価値を定量的に評価できれば、設計した製品・サービスのある使用者にとっての使用価値をシミュレーションし、予め見積もることが可能となります。さらに、製品・サービスの改善点の発見や潜在的な市場の発見等への応用が期待されます。
Keywords: 使用価値、機能論、価値シミュレーション、モデルベース・エンジニアリング
使用価値を持続化する戦略の分析とその応用のための研究
使用価値は、使用者が人工物を使用したときに知覚する価値ですが、これは不変のものではなく、例えば人工物の劣化、使用環境の変化などにより、使用価値が変わることは自明です。使用価値を持続させるためには、このような時間と共なる変化を考慮して適切な戦略を立て、実行する必要があります。
このような使用価値を持続化するための試みは、資源の循環型社会を実現する上でも重要です。使用価値を持続化できれば、製品を新しいものに買い替えずに、長期にわたって使用することができます。つまり、買い替え予定だった製品の生産に要する資源を節約できる上、廃棄物の発生も抑制できます。
本研究では、長期間使用される製品に共通する特徴を分析し、使用価値を持続化するための戦略立案へ応用する方法を検討しています。
Keywords: 使用価値、設計支援手法、タイムアクシスデザイン